絶縁耐力試験と絶縁抵抗試験の目的と違い

2017年6月26日




今回のメモでは、絶縁耐力試験と絶縁抵抗試験の目的と違いを出来るだけ解りやすく説明 しようと思います。

 

二つの試験は共に、電気製品や部品の絶縁性能を把握するための試験ですが、絶縁耐力試験と絶縁抵抗試験の内容は違います。それら違いと考え方をここにメモいたします。

絶縁耐力試験と絶縁抵抗試験の違い

絶縁耐力試験

使用電圧に対して規定されたACもしくはDC電圧を印加し、絶縁破壊を起こすかどうかで絶縁不良を検出する試験(絶縁の強度を見ている)

 

 

絶縁抵抗試験

使用電圧に対して規定されたDC電圧を印加し、抵抗値を測定することにより絶縁不良を検出

以下はさらに詳細のメモです。

 

 

絶縁耐力試験の目的について

絶縁耐力試験は、耐電圧試験とも呼ばれます。電気製品(部品)の使用する電圧に対して十分な絶縁耐力があるかどうか(絶縁破壊をしないかどうか)を確認するための試験です。

 

 

呼び方として絶縁耐力か、絶縁耐圧か

「絶縁耐力」を「絶縁耐圧」と呼ぶ場合もたまに見かけますが、日本電気技術者協会及びJIS内においても「絶縁耐力」もしくは「耐電圧」とされていますので一般的には絶縁耐力もしくは耐電圧としたほうがよさそうです。

 

 

なぜ絶縁耐力試験(耐電圧試験)を行うのか

全ての電気製品や部品は感電、火災等の事故からユーザーを保護する必要があり、それらの事故を防止するための試験として、絶縁耐力試験(耐電圧試験)があります。

 

 

絶縁耐力試験(耐電圧試験)は何を測定しているのか

電気製品や部品は基本的に導体(電気通す部分)と絶縁(電気の通過を妨げる)で構成されていますが、一般的な絶縁耐力試験の方法として、 製品が取り扱う電圧(AC電源・DC電源)に対する規定電圧を規定時間印加 します。このとき、絶縁破壊が起きなければ、十分な絶縁耐力を持つと判断されます。絶縁破壊とは絶縁物に電圧を印加したときに急激な電流の増加があるかをみており、電流が流れれば絶縁が破壊されたということになります。

 

 

絶縁耐力試験(耐電圧試験)の内容はどこで確認すれば良いか(参考:電磁ブレーキ)

試験電圧は電気製品(部品)の規格によって定められています。
例えば 電磁ブレーキの場合、JISB1404-2【電磁クラッチ及び電磁ブレーキ-第2部:試験方法】に記載されています。 内容は以下の通り。

 

絶縁耐力試験(1分間試験)
定格電圧 試験電圧
60V 以下 AC 1000V
60 を超え 220V以下 AC 1500V

 

絶縁耐力試験(1秒間試験)
定格電圧 試験電圧
60V 以下 AC 1200V
60 を超え 220V以下 AC 1800V

などです。例にある電磁ブレーキの絶縁耐力試験は、数多くの製品を試験する場合は1分間の試験電圧の1.2倍の電圧で1秒間加えて試験に変えることが出来るとされています。これも 各電気製品ごとに規格されている ようですのでご確認してください。

 

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絶縁抵抗試験の目的について

絶縁抵抗試験は、JISにおいて各電気製品ごとに絶縁抵抗試験の内容及び保証すべき抵抗値が記載されています。絶縁抵抗試験も、 電気製品や部品を取り扱う電圧に対して規定された直流電圧を印加し抵抗値を測定 します。

※参考:それら記載がない(規格にない)場合、電気設備技術基準58条

 

 

低圧の電路の絶縁性能【電気設備技術基準58条】

電路の絶縁抵抗値を良いか悪いかで判断するには、電気設備基準58条に記載されている値を利用します。これらの値以上でなければなりません。

電路の使用電圧の区分 絶縁抵抗値
300V以下 対地電圧が150V以下の場合 0.1MΩ以上
その他の場合 0.2MΩ以上
300Vを超えるもの 0.4MΩ以上

※電路とは・・・通常の使用状態で電気が通じているところ
※対地電圧とは・・・地面の電圧と一方の電圧との差

 

 

低電圧・高電圧・特別高圧の区分

先ほどの表にあった「低電圧」ですが、絶縁耐力試験と絶縁抵抗試験に限らず、試験機選定する上で、低電圧・高電圧などを目にすることがあるかと思います。それら電圧の種別は以下のようになります。

低電圧

低圧直流(750V以下)低圧交流(600V以下)

高電圧

高圧直流(750Vを超え7000V以下)高圧交流(600Vを超え7000V以下)

特別高圧

7000Vを超えるもの

 

 

絶縁抵抗計の定格測定電圧に対する絶縁抵抗値

絶縁抵抗測定には、絶縁抵抗計を利用します。 絶縁抵抗計で設定する定格測定電圧(印加する電圧)は、測定対象により選択する必要があり、 絶縁抵抗計には以下のレンジがあります。

 

参考:日置電機株式会社様HPより
下記リストの( )内の有効最大目盛値がJIS C 1302規格です。例えば日置電機様の場合、JIS規格を満足しその上で有効最大目盛の高い抵抗計をラインナップされています。

定格測定

電圧[V]

有効最大

目盛値[MΩ]

有効測定

範囲[MΩ]

使用例
一般電気機器 電気設備・電路
25 20(10) 0.02-10 安全電圧での絶縁測定
50 20(10) 0.1-50 電話回線用機器の絶縁
100/125 (20) 制御機器の絶縁測定 100V級以下の低圧電路及び機器
250 (50) 制御機器の絶縁測定 200V級以下の低圧電路及び機器
500 (100) 300V以下の回路

機器絶縁測定

400V級以下の低圧電路及び機器
500 (1000) 1-500 300V以下の回路

機器絶縁測定

1000 (2000) 2-1000 300Vを超える回路

機器の絶縁測定

高電圧を使用する機器

 

絶縁抵抗試験と絶縁耐力試験どっちが先?

絶縁抵抗試験は、絶縁耐力試験を行う前の試験電圧を加えることが可能か確かめるために行うので、一般的には絶縁抵抗試験が先になります。(絶縁抵抗試験を必要としない製品規格もあります)

 

以上です。