今日は 「モーターの各種計算・選定・使い方・考え方」 についてのまとめをメモしたいと思います。
機械において 重要な原動力であるモーター ですが、 このモーターの計算・選定を間違えると 当然のことながら機械が動かなかったり、早期に寿命を迎えてしまったりすることになります。
私たち設計者はモーターの選定・計算を行うにあたって以下の手順を踏むことが一般的です。
- 駆動を伝える機構を考える
- 動かす対象物が持つ負荷の把動及び動かす速さを決め必要トルクを求める
- イナーシャ比の確認
- 安全率を加味する
- モーターのタイプ選定(電源・入手コスト・メーカーへの確認)
これらの手順を踏んでモーターの選定を行うわけですが、モーターの選定は各セッションで重要なことが多いので、このページでは一般的なモーターの選定方法・トルクなどの各種計算方法に対し説明を添えてメモしておきます。
一見難しいようですが、私のような文系出身のエンジニアでもモーター選定が出来るようにまとめています ので是非参考にしてみてください。(付属の計算資料もあります)
モーター選定計算の手順
① 駆動を伝える機構を考える
まず先に、モーターが動かす機構を決めます。 お客様の要求が モーター+ボールねじ だったり コンベアでピッチ搬送だったり、機械のパターンは様々なので、もし設計者自身が決められるのであればその思い描いている機構で設計を進めていきます。
例えば、私のような 生産設備・組立機械設備の設計の場合、目標の生産タクトというのがあって、 思い描いている機構で必要速度・移動量を割り振っていく作業 をします。 ここでは 直線運動 や 回転運動 などの情報も計算しながら 機械として実現可能な落としどころを探していきます。
この機構は、この後に計算する必要トルクの項目と行き来します。 ①で思い描いていた機構で②の必要トルクを計算したときに モーターがとんでもない回転を数回さないと実現できない機構というのも考えられるから です。
ここが一番時間のかかる作業でもあります。
補足:出来る設計者は ここの仕様決め能力に優れています。 あらゆる経験を活かして最適解を導き出します
② 動かす対象物が持つ負荷の把動及び動かす速さを決め必要トルクを求める
モーターの必要トルクを計算する時、
- 負荷の把握
- モーターの駆動速度の把握
が必要です。 この二つは 設計する機構における負荷とその機構で必要となる駆動速度 などで、設定を調整しながらモーターの必要トルクを計算します。
例えば、 モーター+ボールねじ で駆動を検討している人はボールねじの回転を直線運動に変えるので、 ボールねじを使って上下昇降する時のモータートルク を計算したり、 ボールねじを使って水平搬送する時のモータートルク を計算してモーターに必要なトルクを求めます。
モーター+コンベア の機構なら コンベアのモーター選定に必要なトルク計算 をします。 その他にもこのブログでは準備できていませんが ラック&ピニオン機構 なども機構として一般的です。 もちろん モーターで直接回す場合もあり、その際には 基本的なモータートルク計算 を用いてモーター選定に必要なトルクを算出します。
補足:機構が決まっている場合はイナーシャ計算だけで良い
機構が決まっている場合は、負荷も決まっているはずなので、この場合モーターの選定を行うためには、駆動対象の負荷を確認し、その慣性物をどの速度で運ぶかなどの情報を基にモーターの必要トルクを計算すればよいです。
慣性モーメントは物体の回転か直動なのか、そしてその物体の形状・重さ・大きさで計算方法が変わってきます。それらの計算方法や詳細は以下の記事を参考にしてください。
②-1 慣性モーメント(イナーシャ)について
②-2 イナーシャの計算方法
③ モーター能力を確定する前に一旦「イナーシャ比」を確認する
この時点でモーターに必要なトルクは算出できていますが、ここで一旦選定を止めて確認することがあります。
それはイナーシャ比です。
イナーシャ比を簡単に説明すると、 モーターの持つイナーシャと負荷イナーシャとの比で、 通常はモーターの持つイナーシャよりも高い負荷の慣性体を回すことがほとんどなので、比が大きければモーターが制御不能になり、小さすぎればモーターが過大サイズであることもわかります。
これは モーターサイズ選定を間違えない考え方 を読んでもらえば理解が深まると思うんですが、 モーターに求められるトルクというのは、計算上 ゆっくり加速していけば低トルクで回せたり、その逆もありますが、このイナーシャ比は適切なモーターサイズを決定するための大切な情報 です。
私の場合は、モーター選定の根拠を求められることも多く、 慣性モーメント_確認シート などを利用して選定経緯を記録しています。
④ 安全率を加味する
当ブログで提供している計算エクセルでは安全率を含んだ計算が可能となっています。 もしそこで安全率を加味しない場合は最終段階で使用状況に応じた 安全率 を掛けてください。
⑤ モーターのタイプとメーカーを選定をする
上記までの計算で必要能力が解り、 ここでようやくモーター自体の型式選定やメーカー選定を行っていきます。
モーターには DCモーター、ACモーター、ステッピングモーター、サーボモーター、減速機付き各種モーター 多くの選択肢があり、メーカーを含めるとさらにその選択肢は広がります。 その際に気にする部分として
など、基本的な特徴をとらえて各メーカーに問い合わせ、最適な機種を提案してもらうのが良いと考えます。
これで選定は終了です。
その他各種計算
その他、モーターの計算で たまに必要になる項目は以下の通りです。
以上です。
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